八月六日。
目の前に広がるのは、色のないモノクロな世界。
何度も見たことがあるのに、何度も見ても私の想像が追い付かない。
どれほどの年月を重ねても。
どれほどの爆音が降り注いでも。
あちこちから流れ着く、泣き声しか聞こえない。
どれも小さく、星の数ほどあるすべてを拾い集めることはできない。
限りある一部だけを拾っても、空からやってくる爆音はかき消される。
いつもどおりの空はこの世の終わりを迎えた。
見たことのない大きく黒い雲は、すべてを奪い去っていった。
何もかもが終わったはずなのに。
まだ終わってなんかいなかった。
どれほどの苦労と悲しみと努力と愛情を積み重ねたのだろう。
私の想像が追い付かない。
私の想像なんかより遥か彼方。
目を閉じる。
私は誰かの礎の上に立っている。
手を合わせる。
私も誰かの礎になりたい。
今もどこかで泣き声がする。
小さくて細いけれど、確実に。
まだ終わってはいない。
目を開けると、そこには小さな掌。
何も言わずに、そっと握る。