雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

大きなことは小さなことの集合体。

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コンビニ行ってくる。

リョウスケは静かにドアを閉めた。

 

ルミは何も答えず、床に寝そべった。

 

 

 

だるくて夕食作る気が起きない。

リョウスケがコンビニに行く前にルミはそう言った。

 

じゃあ何か食べに行く?

リョウスケはルミに言う。

 

動きたくない。

 

わかったよ。

そう言って、リョウスケはコンビニへと向かった。

 

 

 

ルミは最近ずっと、からだがだるかった。

 

生理じゃないの?

リョウスケはルミに言った。

 

まだ来てないの…。いつもならもう……。

ルミはリョウスケの顔色を伺った。

 

そう。

リョウスケはそれだけ言った。

 

それから数日後、生理が来た。

そしてルミはそのことをリョウスケに告げた。

 

そう!体調は?まだ?じゃあ夏バテだな。スタミナつくもの食べに行こうか。

なんだか夏の空みたいなリョウスケにやたらと腹が立った。

 

同棲して一年以上。結婚なんてまだまだ先の話。それでもいろいろ考えることはある。不満はないことはないけど、それはお互い様だし。

 

生理はもともと不順気味だし、夏は相変わらず暑いし。

 

リョウスケじゃないとダメ!

なんて言うほどピュアな人間じゃない。

 

刺激が欲しいわけじゃないけど、ただ毎日が何度も過ぎていくことに疑問を投げはじめる頃に聞いた、あの言葉。

 

ただ、リョウスケの晴れやかな言葉と表情が気に喰わなかった。

 

あのときのリョウスケは、これまでの私もこれからの私も否定しているようだった。

 

 

 

床に寝そべったルミは、あーあ、という空っぽの声を出す。

リョウスケの言葉を聞いてからさらに、からだも心も脳ミソも、だるい。

 

ドアがガチャリと開く。

ただいま、も言わずにリョウスケが帰ってきた。

 

ビニール袋をいくつも持って、いろいろ買ってきた。

食べ物も飲み物も。

 

食欲ないならこれは?

これだったら食べられる?

冷たいものばかりじゃなく温かいものも食べなきゃ。

 

リョウスケなりにいろいろ考えて、いろんなパターンを想定していろんなものを買ってきた。

 

そして最後にリョウスケはビニール袋から取り出す。

 

これ、好きでしょ?

 

ルミの好きなアイスクリームだった。

 

ルミはそれを見て、あーあ、と湿った声を出す。

 

リョウスケは、何?みたいな顔をする。

 

ルミが二番目に好きな顔。

 

ありがとう。

ルミはリョウスケに笑ってお礼を言う。

 

うん。

リョウスケは、ルミが一番好きな顔をしながら言った。