癒えた傷でも痕は残る。
なくしたときは何も思わなくて。
なくした後になくなったのだと実感する。
それを後悔と呼ぶのなら。
なくさないようにするために。
なくした時のことを考えて。
なくさないために何ができるのか考える。
それを想像と呼ぶのなら。
目の前のことが目の前じゃなくなって。
鼻の先にあったものが鼻の先じゃなくなって。
あなたに触れていようと。
あなたの温度を感じていようと。
あなたの匂いを覚えていようと。
それが大切にするっていうことなら。
私はあなたに何をしてあげられたのだろう。
あなたは私をどう思っているのだろう。
後悔するたび涙を流し。
想像するたび不安になり。
大切にしようと思えば思うほど、きっと大切にできていないのだと気づく。
さよなら、の代わりに、またね、と言ったところで。
また会える保証はどこにもない。
だから笑っていたいのに。
上手く笑えない。
それでも、笑ってみせる。
上手に笑えるようになるまで、ここに居てもらっていい?
隣に居てもらっていい?
今なら簡単に言えるのに。
後悔したくないから。
涙を流したくないから。
笑っているふたりを想像する。
こんな想像だけはお手のもの。
なくしたものは戻らないのに。
もっと大切にしておけばよかった、と何度も繰り返す。