雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

まだ見ぬ知らぬ人事は数多。

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 ギターひとつだけ抱えてどこかへ行きたい。

 

素敵なメロディーが浮かんできて、それを口ずさむ。

 

見たことのない景色と人に囲まれ、知らない私が生まれてくる。

まだどこにも存在しない。

生まれたての私と歌を。

 

これから育んでいく。

大切に、大切に、育んでいく。

 

メロディーが鳴るのと同時に、新たなメロディーが続いていく。

ギターで奏で、口笛を乗せて、誰かの心に響くメロディーを重ねていく。

 

見たもの。

口にしたもの。

嗅いだもの。

聞こえたもの。

 

嬉しいこと。

哀しいこと。

怒れること。

 

すべてをメロディーに乗せていく。

 

ギターひとつだけ抱えて。

いろんなところへ行きたい。

見知らぬ土地とまだ見ぬあの人を探しに。

 

ほら。

あなたといれば、風が吹いただけでメロディーが生まれる。

 

 

 

なんて力は私にはない。

残念ながら。

 

メロディーなんて、どこかで聴いたことのあるものしか思い浮かばない。

 

それでも、まだ見ぬあの人を探している。

 

どこにも行けないけど。

遠くへはなかなか行けないけど。

 

また見ぬあなたを探している。

 

メロディーは全然浮かんでこないけど。

言葉はちゃんと浮かんでくる。

 

「ありがとう」と「ごめんね」。

まだ見ぬあなたには、きちんとこの言葉を伝えよう。

 

ギターなんて弾けないけど。

どこかで聴いたことのあるメロディーに、どこかで聞いたことのある言葉を乗せてあなたに届ける。

それは、きっと、唯一無二のものになる。

 

新たなメロディーは生まれないけど。

新たな私は生まれているはず。

 

ギターなんて弾けないけど。

「愛してる」をきちんとあなたに届けたいから。