忘れ物を取りに行く。
ありがとう、と言いたいときに限って、ごめんね、と言ってしまう。
どこまでも素直になれない。
あなたの気遣いがとてもうれしいのに。
どんなに小さくても気づくことができるのに。
気づかないフリをしてしまう。
当たり前だと思ってしまう。
ごめんね。
ありがとう、と言えばいいのに。
難しいことじゃないってわかってるのに、ありがとう、と言えないのは、それが難しいことだからかもしれない。
難しいからしょうがない、って逃げてるんだ。
いつも逃げてばかりで、捕まっても捕まったことを認めないんだ。
ごめんね。
難しくしてるのは私なのに。
小さいころはあんなに簡単に言えたのに。
時が経つにつれ、難しくなってくる。
ありがとう、がどんどん重たくなってくるのかな。
ありがとう、がどんどん大きくなってくるのかな。
ひとりで生きている、なんて思わない。
誰かがこっちを見てくれるから。
誰かが話しかけてくれるから。
誰かが手を差し伸べてくれるから。
なのに、それをすぐに忘れてしまう。
ごめんね。
ごはんを食べられるのも。
寝ることができるのも。
笑うことができることも。
誰かのおかげなのに。
あなたのおかげなのに。
ありがとう。
ようやく言えたから次は君に、ありがとう、と言ってほしい。
君に、ありがとう、と言ってもらえるようにするから。
ありがとう、ばかり言うんじゃなくて。
ありがとう、と言ってもらえるようにする。
難易度はさらに上がる。
だって、どういたしまして、なんて久しく言ってないから。
ちゃんと言えるまで私に付き合ってほしい。
私がちゃんと、どういたしまして、と言えるか確かめてほしい。
ごめんね。
わがままで。
ありがとう。
これからもよろしく。