雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

用法容量をお守りください。

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用法容量をお守りください。

 

言われなくてもわかってる。

言われてるから守ってる。

 

でも、それで何かあっても誰もが知らんぷり。

 

人はそれを、自己責任、と呼ぶ。

 

そんなことはわかってる。

悪いのは私だってわかってる。

 

言われたことを守ったのに。

言われたことだけやっているうちは一人前じゃない。

なんて言われたら、どうすればいいの。

 

言われたこと以上のことをやろうとしたのに。

余計なことをするな。

なんて言われたら、どうすればいいの。

 

私は言われたことを守っているだけなのに。

用法容量の幅がよくわからないよ。

 

タバコを吸ったら嫌な顔される。

ここは喫煙可なはずなのに。

灰皿あるでしょ。

ポイ捨てなんてしないし、歩きタバコもしないし、煙の行方も気にしてる。

マナーは守っているのに責められる。

 

お酒を飲んでもいいじゃない。

泥酔して迷惑かけているわけじゃないんだから。

からだに悪いって言われても。

少しだけ饒舌になるのがダメなのか。

そこまで酒癖悪くないはず。

 

法定速度守っているだけなのに。

そんなに煽らなくてもいいじゃない。

安全運転しているだけなのに、クラクションなんか鳴らさないで。

先に行きたければいつでも譲るから。

私はそこまで急いでない。

 

布団をちょっと蹴飛ばしただけじゃない。

最近少しずつ温かくなってきたから。

そもそも寝ていて無意識なんだから、私にはどうしようもない。

意識があるときは、しっかりと布団をかけているから。

 

用法容量の幅がわからない。

私はそこまで世界とズレていないと思っているのに。

 

用法容量の幅が狭すぎる。

少しはみ出すだけで、それ以上の何かが起こる。

 

用法容量をお守りください、って書いてあるから。

私は私なりにしっかりと守ってる。

でも私のことは誰も守ってくれない。

 

風邪をひいたのは私のせい。

誰のせいでもない。

でも私だって風邪をひきたくてひいたわけじゃない。

少々の風邪なら休むこともない。

しっかりといろんなことを守ってきたのに。

それでも風邪くらいひいてしまう。

それでも私が悪いというのなら。

 

風邪薬を手に取る。

用法容量をお守りください、って書いてあるから、しっかり守る。

 

すぐに風邪が治るわけじゃない。

もしかしたら気休めなのかもしれない。

それでも手放すことはできない。

ひとりで苦しんでいるとき、あなただけはそばにいてくれるから。

あなたはこんなにも、やさしさに包まれているのだから。

 

誰も私を守ってくれなくても、私はしっかりと守る。

私の中のルールを、しっかりと守る。

そうすれば、いつかきっと誰かが私を守ってくれるから。

 

こんな私をやさしく包んでくれる人が、いつかきっと現れるから。