雑文記【ひびろぐ】

いつだって私たちの手のひらには物語がある。

自分に嘘をついてもすぐにバレる。

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正直に生きていくっていうのは難しい。

 

本音と建前っていうやつ。

建前なんてどこで覚えてきたのだろう。

いつ覚えたかなんて覚えてないけど、どこかで覚えたのだろう。

 

これを言ったら、きっと傷つける。

これを言ったら、きっと空気が悪くなる。

これを言ったら、きっと嫌われる。

 

いつかどこかでそんな体験をしたときに覚えたのだろうか。

はっきりとしたことは何も覚えてないけど。

 

そんなことばかり考えているから、本当に言いたいことなんて何ひとつ言えなくなってしまう。

 

人に対してそんなんだから、自分に対してもそんなん。

自分にですら本当のことを言えなくなる。

本心に気づかないフリをしてしまう。

 

コーヒーにするかお茶にするか。

 

自動販売機の前で悩む。

寒いからあったかいものを飲みたい。

 

コーヒーは好きだけどついさっき飲んだばかり。

お茶だと少し量が多くてあったかいうちに飲み切ることができそうにない。

 

どうしようか迷う。

でも本心では決まってるはず。

どっちを飲みたいか決まってるはず。

それに気づかないフリをしてしまう。

 

そこで私は最終手段に出る。

 

コーヒーとお茶のボタンを同時押し。

どちらを飲むのか運に委ねる。

 

でもきっと運命はもう決まっている。

 

本当に飲みたい方を、ほんの少しだけ早く押すから。

気づかないフリをして、ほんの少しだけ。

 

答えはわかっているけど、ドキドキする。

 

誰が見ているわけでもないのに同時に押そうとする。

私しかいないのに本当に飲みたい方を少しだけ早く押す。

 

誰に言い訳しているのか。

こんな簡単なことくらい、自分に正直になればいいのにと自分でも思う。

 

ドキドキしているのは、飲みたい方がちゃんと出てくるかどうか心配だから。

 

そんなところだけ正直になってしまう悲しい性。

 

ゴトンッ、と音がしてゆっくりと取り出し口へと手を伸ばす。

 

冷たい手を温めてくれたのは、コーヒーだった。

ほっ、と胸をなでおろして両手で包み込む。

 

やっぱり正直に生きていくっていうのは難しい。