素晴らしき世界④
みんな笑っている。
それはとても素敵なこと。
それはみんな知っている。
だから、笑う。
笑っているから幸せなんだよ、って笑っている。
でも。
きっと誰もいないところでは笑っていなくて。
それでも誰もが笑っている。
口では、自分さえ良ければそれでいい、なんて言いながら。
目の前にいる名も知らぬ人を笑わせようとする。
大なり小なり、する。
笑わせることができなかったとしても、笑顔をなくすようなことはしない。
名を知っている人が目の前にいれば、その強度は増す。
笑わせることができなかったとしても、それはあくまで結果論。
自分が笑うということはそういうこと。
ひとりじゃ笑えない。
誰かがいるから、笑っている。
こっち見て笑っていても、あっちを見れば笑っていない。
あっちに誰かいれば、また笑う。
なんのために?
自分のために?
そう言いながら、きっと違う。
違う、というのは正解でも正確でもないのだろう。
楽しくても哀しくても怒っていても嬉しくなっても、困っても、笑う。
そうしないと誰かが傷つくから。
みんなそれを知っている。
やっぱりそうだ。
自分のためなんかじゃない。
だから笑う。
理想とはかけ離れていても。
それはそれで、素晴らしき世界。