見えないものと見えすぎるもの。
なんだかいろんなものが見えづらくなって。
なんだかいろんなものにピントが合わなくて。
日常生活に支障をきたすので、眼鏡屋さんへと向かった。
視力検査をしてもらうと、相当視力が落ちていた。
そりゃ、見えづらくもなるよ。
日に日に、見えづらくなって。
見えなくなって。
見たくなくなって。
ぼやけて見えることに慣れてしまって。
けれども、こんなに悪くなっているとは思わなかった。
眼鏡を新調する。
店員さんがあれこれと勧めてくれる。
デザインをどうしよう。
色をどうしよう。
いろいろ試して、一番気に入ったものを手に取り、かける。
レンズはどれも同じ。
今までよりもはるかに視界が良くなりますよ。
店員さんは笑う。
さっきまであんなにぼやけていた店員さんの顔が、はっきりと見えた。
店を出る。
あたりを見渡す。
世界が変わったようだ。
いろんな人とすれ違う。
いろんな人と話をする。
眼鏡をかけて、いろんな人と。
今までぼやけていたものが、はっきり見える。
はっきり見えすぎる。
見えなかったものが見えてくる。
見たくないものまで見えてくる。
時折、眼鏡を外して視界をぼかす。
こっちのほうが良かったのかも。
大きな息を吐き出しながら、瞬きをくりかえす。