夏の最後。最後の夏。
もう夏も終わりだから、花火でもやろうか。
君はそう言った。
コンビニへと寄って花火を買う。
けっこう残っている。
もう夏も終わりだ。
そう言いながらも、コンビニは涼しくていいね、なんて言って笑う。
君はスマホばかりいじっていて、何も答えてくれないけれど。
コンビニを出ると、すぐに熱気がからだに纏わりつく。
まだ暑い。
俺も君も、まだ半袖。
少しばかり日が暮れるのが早くなった気がして、早速花火に火をつける。
俺は色が変わるやつ。
君は線香花火を、手に取る。
パチパチと音がする。
きれいだね、と言ったのは最初の方だけ。
すぐに無言になり、花火の音ばかり聞こえてくる。
袋に入った数十本の花火をやり続ける。
ただ時間が流れる。
もう夏も終わりだね。
俺が口を開く。
君は何も言わずに頷くだけ。
こうなることは、前から薄々気づいていた。
花火の火花を見つめて、心が決まった。
これが最後ね。
君はそう言って、避けてあった最後の線香花火に火をつける。
うん。
俺は下を向いたまま言う。
君の持つ線香花火が光る。
パチパチと音をたてて。
導火線のように、じりじりとカウントダウンがはじまる。
火花が君に近づく。
もうすぐ終わる。
火花が消えた。
火種は落ちずに、きれいに消えた。
君も俺も何も言わない。
心は決まったはずなのに。
夏はもう終わりそうなのに。
花火はもう終わったのに。
やたらと喉が渇いて、しょうがない。