立ち位置はいつでも気になる。
もう夏も終わりだね。
リエは空を見上げる。
そう?まだまだ暑いよ。
タクマは額にかいた汗をぬぐう。
本当に汗っかきだね。
仕方がないだろ。
ほら、肌に当たる陽射しの強さが違うでしょ?
大して変わらないよ。
全然違うよ!
まあ、厳密に言えば、毎日違うけどね。
タクマは拭いても湧き出る汗を拭き続ける。
でも、境目ってなんだかうれしくない?
リエは否定するタクマの言葉を無視するように、話を続ける。
境目?
季節もそうだけど、雨とか、なんかの仕切りとか。
そう?
なんか、どっちにでもいけるっていうか、どっちにもいるっていうか。ここで変わるんだって思うと、なんだか興奮しない?
そう?
リエの熱量を冷ますように、タクマは冷たく答える。
……今、なんの境目かわかる?
うん?季節じゃないの?
あなたと別れるかどうかの境目よ。
えっ?今?なんで?
そういうところ。
どういうところ?
鈍い表情のタクマを見て、リエは笑う。
まあ、いいわ。あっ、ほら、今ここ!
ん?
こっち来て。
リエは手招きする。
ほら、ここ。日陰。そっちは日向。
リエは影に立ち、タクマは日向で汗をかく。
ね?今私たちは、季節の変わり目に立っているの。
影にはひんやりとした空気があり、陽射しを浴びるタクマは汗をかく。
俺はそっちがいいな。
タクマはリエのほうへと歩く。
ダメ。
なんで?
ここが季節の変わり目だと思う?
リエは笑う。
うん。
タクマは即答する。
じゃあ、こっち来ていいよ。
リエはタクマの手を引く。
大きな雲が太陽を隠し、あたりは影に覆われた。
ひんやりした空気がふたりを包み、やさしい風がふたりを吹き抜けた。