どこに行ってもそこそこ気になる。
この扉の向こうは、どうなっているのだろう。
この扉の向こうには、どんな人がいるのだろう。
こんなに目の前にあるのに。
一歩踏み出せば届くのに。
私にはこの扉を開けることができない。
ただ見ているだけ。
開けたらどんな風になっているのか、想像するだけ。
それなのに。
私の前を通り過ぎて、何人もの人が簡単に扉を開けていく。
何の躊躇もなく、扉を開ける。
誰かが扉を開けたとき、私は身を乗り出す。
さりげなく。
まわりの目を気にしながら。
ほんの少しの隙間から見える扉の先は、何の変哲もない空間だった。
でも、きっと、何かがある。
その奥に広がる空間には、きっと何かがある。
それでも私はここから先に進むことができない。
こんなに目の前にあるのに。
手を伸ばせば届くのに。
私がこの扉を開ける方法は、ひとつだけ、ある。
勝手に開けるのはご法度。
それ以外に、ひとつだけ、ある。
私はしばし考える。
扉を開けるためだけに。
扉の向こうを見たいという願望のためだけに。
その手を使っていいものか。
私はしばし考える。
その手を使うなら、それなりの覚悟が必要だ。
それじゃあ、と簡単な決断ではいけない。
私はしばし考える。
目の前の扉を見つめる。
扉にはこう書いてある。
「関係者以外立入禁止」
私はしばし考える。