星座にまつわる神話は独特。
死んだら星になりたい。
なんて、ロマンティックなことは言えない。
でも考えてみたことはある。
なぜ星になりたいのか。
きっと寂しいからだ。
あなたと離ればなれになってしまうから、何か繋がりがほしいんだ。
星になったらどうなるのだろう。
ちょっとだけ考えてみた。
仮に星になったとしよう。
遠く離れた輝く星からは、真っ暗な地上は見えない。
ということは、あなたのことも見えない。
君からは私の光が見えるだろう。
でも私が発している光は、何万光年前とかいうレベルの話だ。
私が星になったとしても、私の光があなたのところに届くころには、あなたはいない。
つまりあなたが見ている光は、私の光ではない。
仮に今すぐ星になったとしよう。
今ある無数の星の中からひとつ選んで、私がその星になったとしよう。
これなら、あなたは私の光を見てくれる。
でも、これだけ多くの星の中から私を見つけることができるのか。
あなたも私も、それほど星に詳しくないから。
だから、どうせなら、わかりやすい星がいい。
有名な星がいい。
オリオン座なんてどうかな。
あれなら星に疎い私にだってわかる。
三つ並んだ星の左端がいいかな。
でも、やっぱり、一番は北極星かな。
わかりやすいし、見つけやすい。
星になってしまったらあなたにできることは何もなくなる。
だからせめて、方角がわかる星がいい。
あなたの行くべき方向を照らす。
私を頼りに、あなたの行くべき方向を知る。
私からあなたは見えないけど。
あなたが私を頼りにしてくれるなら、それでいい。
それなら星になってもいいと思える。
こんな架空の物語。
私だけがやたらと良い人みたい。
こんな架空の物語。
目の前で会えるうちに、話せるうちに、手を繋げるうちに。
あなたにしてあげられることをしなくちゃならない。
いつでも明日がやってくるとは限らない。
いつでも星が見えるとは限らない。
いつでもあなたが傍にいるとは限らない。
こんな架空の物語。
私が星になる前に。
今もこれからも。
私があなたにやるべきことは星の数ほどある。