どこで咲いても花は花。
道を歩いていたら、小さな花が咲いていた。
アスファルトのはしっこに白い花が。
ひび割れたアスファルトの隙間から、一輪の花が咲いていた。
私はこの小さく美しい花の名前を知らない。
アスファルトの隙間を縫うように咲いたのか。
アスファルトを突き破って咲いたのか。
私はこの小さく美しい花がどのようにして咲いたのか知らない。
なぜそこに種がまかれたのか。
風のいたずらか虫の勘違いか。
最近は一日中雨が降っている日なんてなかったのに。
昨日はなかったと思うけれど。
君はいつ咲いたのだろう。
私は君がどのような思いでいるのか知らない。
すごいことなんだ。
たったひとりでこんな場所で。
私だったら、とうに諦めていただろう。
素晴らしいことなんだ。
きっと私だけでなく、いろんな人が君に目をやるだろう。
君の名前を知らない人も知っている人も。
君もこんな場所で咲くとは思っていなかっただろう。
もっと仲間がいるところで。
もっと過ごしやすいところで。
もっといろんな人に見られるところで。
もっといろんな生き物と絡めるところで。
君がそこにいることを望んでいるのかいないのか、私は知らない。
けれども、ここに君がいることで私は出会えた。
私以外の人たちもそうだろう。
私たちは君がここにいることで、癒しと勇気を与えられた。
君から。
名前は知らないけれど、ありがとう。
君は教えてくれた。
どこで咲くか、よりも、何を咲かせるか、ということを。
名前も知らない君の花。
知らなくてもわかっていることはある。
君が咲かせた花はとても綺麗だということ。
どうしてそこで咲いたのか。
どんな経緯があったのか。
君は今どう思っているのか。
私は何も知らない。
君は綺麗に花を咲かせた。
求めていたものではないのかもしれないけど、君は見事に咲かせた。
花を咲かせたことを、誇りに思い、喜ぼう。
名前なんてただの記号だ。
君の本当の名前を知らなくても、私は君が美しいと知っている。